JAPAN INNOVATION LEADERS SUMMITのまとめ

2011年8月6日に開催された「JAPAN INNOVATION LEADERS SUMMIT」に参加してきました。

JAPAN INNOVATION LEADERS SUMMITの配布資料
JAPAN INNOVATION LEADERS SUMMITの配布資料

00イベント概要

メインタイトルに、

~MIT教授 石井裕氏、ハイパーエンジニアたちとテクノロジーの未来を語ろう~

と掲げられ、参加企業にアマゾンジャパン、クックパッド、グリー、ミクシィ、ヤフー、リクルートのトップエンジニアの方達の技術講演が行われ、その後にエンジニアの交流会という濃密な内容でした。

詳細は公式のTech総研 JAPAN INNOVATION LEADERS SUMMIT をご覧下さい。

01Opening Keynote & Special Session

まず、Opening Keynoteを飾ったのは株式会社デジタルガレージの佐々木智也氏

『震災から見えたtwitterの可能性と、今後のメディアインキュベーション展望について』

3月11日の大震災を振り返り、Twitterを初めとするソーシャルメディアの可能性について言及された。

創業者のビズ・ストーンが作ったシートをみて言われたというのが印象的。
「ツイッターを最初に彼らが作ったとき、それが何を起こすのかまったくわからなかったが、デマや誤情報が流れたとしてもそれはグローバルでポジティブなインパクトをもたらすと信じて開発を続けてきた。我々もそれを信じていきたい。
震災を受けて我々が思ったのは、メールが不通の時にツイッターがつながった。
正しいか正しくないかはともかく善意で情報が拡散するということ。
ツイッターの今起こっている状況を可視化するという機能、速報性や伝播性が再認識され、社会インフラとして認められたと思う」

「技術の勝利ではなく、人間性の勝利」

多くの人が徒歩で帰宅し、避難所を求め、被災地の現状を知るための一番の情報源は確かにTwitterでした。


そして基調講演は MITメディアラボ教授 石井 裕先生の、

『311クライシス・レスポンス:エンジニアの活躍と未来展望:レジリアントな世界を構築するために』

スライド数は圧巻の250枚。講演時間が50分間なので1分に5枚のスライドをめくるペースというのが凄い。
講演は圧巻のスピードで進んで行く。スライドも美しい。

その他、講演内容は以下のようなもの。
・宮沢賢治から得たもの。詩を読む事は誰かがエンコードしたものをデコードする。それを自身の訓練としている
・「永訣の朝」の肉質原稿に書く万年筆からのアナログの響き。デジタルの乾き。
・原発の説明資料、技術者・科学者の説明能力が必要
・イラストレーション、ビジュアライゼーションを駆使して伝える事の重要性
・Hack For Japan の成果
・Connect People, with People, Information & Resources
・3.11で学んだ教訓「lessons learned」
 1. open information
 2. crowd sourcing
 3. mashup & curation
 4. resilient market of supply & demand

などなど・・・まとめあげるのが難しいほどのボリュームあるプレゼン。

一番印象に残っているのは、一番最後の「未来」の話し。

 2200年、自分がいなくなった世界で自分の事を、現在の事をどう思い出されたいか

10年後、20年後ではなく100年後や200年後に何を残すのか意識してモノ作りをした事がなかった自分にとって、改めて考えさせられる機会を与えて頂きました。

講演内容は石井教授のツイートからも確認できるので、@ishii_mitをフォローしてみてください。

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02各社エンジニアよる技術講演

スマートフォンで加速する「GREE」グローバル開発の現場

GREEの荒木さんによる講演。
内容は、スマートフォン市場についてやGREEのスマートフォンサービス開発現場の話しが中心。
Java Script Flash ランタイム「Reel」の公開予定や「Adobe and GREE」でFlashでつくったネイティブアプリがGREEプラットフォームにだせる様になる、等と言った話しもあり。
印象に残った言葉は「エンジニアは英語勉強するよりコードで語れ」ソースコードで国境越えて理解しあえるとか・・・。


1200万人の食卓を楽しくする技術

クックパッド 橋本さんの講演。
ユーザの利用状況や、それを支える技術とUXのアプローチが中心の内容。

クックパッドは 1200万UU / 月(PCアクセスのベース) 日本女性の19%が月1でアクセスしている計算。
画像配信システム「Tofu」を開発し、レシピ画像を動的にリサイズしてクラウドに保存
既存システムでは新しいサイズの画像を作るのにバッチ処理で800万の画像リサイズ処理をする必要があった。運用時に非効率なのでTofuを作るに至ってそうです。あとNFSで耐えきれなくなったので、AmazonEC2へ移行。開発者1人でやったというから驚き。
また、クックパッドはruby on railsで作られており、ディレクトリで分割して機能をカプセル化し、機能のOn/Offの切り替えを容易にする「Extension Framework」を活用している。

35人の精鋭エンジニアが料理を楽しく生活を向上するシステムを構築している。
積極的に新機能を試す為の仕組みがしっかりしていて・・安定したサービスの裏の努力を感じました。

社内では皆で投稿されたレシピを実際に作れるキッチンがあり、ランチはみんなで作って食べたりするそうです。(食材費用は会社負担)


ソーシャルグラフのデータ解析

mixi 木村さんの講演。

ノード毎にプロパティを持つGraph DBの説明など、技術的な話しを中心に展開されたが話しが深い。
グラフィカルな資料を元に、どうソーシャルグラフが形成されているかとても分かりやすかった。

登壇された木村さんの講演に近い執筆記事はこちらの「WEB+DB PRESS Vol.59」に掲載されていました。
とても濃密な話しだったので復習が必要だと思いすぐに購入。勉強になります。


ライフエンジンを支える検索エンジンの作り方

Yahoo! 小林さんの講演。

「検索エンジンは検索結果を取って来るだけでなく、ユーザーがより目的の情報を見つけやすくするため支援している。キーワード入力補助やスペるエラー、関連するキーワードなど、色々な技術を追加していくことが重要」
こつこつと積み重ねてきた結果が、今日のYahooの証明。素晴らしい。

そして、broderのクエリ分類別にチューニングを行うとのこと。
 1. informational query 何かを知りたい
 2. navigational query 特定ページへ
 3. transactional query 何かの作業をしたい
クエリの分類を深く理解し、最適なクエリの検索結果を出すのに試行錯誤している。
今後は対話型検索エンジンを目指すとの事。どう進化するのか楽しみです。

しかし社員が4800人いて2000人がエンジニアだそうですね・・すごい体制。


Hadoopによるリクルートでの技術調査とその活用

リクルートの中野さんの講演。
solrとcache-moduleとhadoopを主軸にした内容。

多くのサービスを抱えるリクルートの中で、各事業を深く理解しているエンジニアがシナジーを生むのだと言う事と、
紙媒体の資産をウェブで活用するためのアプローチがとても勉強になった。

「居つかないこと」という言葉が印象に残っている。
武道の言葉らしいのですが、足を止めずに技を途切らせることなく繋ぎ続けるといった意味があるらしいです。

あと、Hadoopの語源が開発者のお子さんが持っていた、黄色い象さんのぬいぐるみの名前だった事が判明した。
けっこうサービスや製品の名前決める時って、そんな感じだったりしますよね。


クラウド時代のアーキテクチャ設計

Amazon Data Services Japan 玉川さんの講演。

EC2やAWSのクラウドを利用したWebのアーキテクチャ設計。考え方のお話。

とにかく面白かった。
物理デバイスと異なるクラウドの特性を知る事と、スケーラビリティの高いアーキテクチャ設計。そして、高いコストパフォーマンスを発揮する。
AWSは「エンジニアのためのレゴブロック」とのこと。これからもたくさん遊ばせてもらいます。

時間が押していたので駆け足でプレゼンが終了してしまった事が残念・・・。
ですが、講演者の玉川さんが講演資料をアップしてくれています!感謝。


MIT石井裕教授 × Hack For Japan スペシャル対談

対談形式ではなかったですが、Hack For Japanの中心者でグーグルの及川さんが登壇。

3.11の震災直後のHack For Japan立ち上げの話しから会場の皆が聞き入っていました。

「何かできないだろうか」
「何かできるはずだ」
「今やらないでいつやるんですか?」
「やりましょう」
「コードで繋ぐ。想いと想い」

誰もが不安を抱える中で「自分たちにも何かできることがあるはず」と奔走し一歩を踏み出した、
全ての軌跡はHack For Japanに関わった人々が残している。

スライドの最後に表示されたのは、エンジニアらしいメッセージ。
 while(Japan.recovering) { we.hack(); }

詳細はHack For Japanブログと及川さんのブログで。必読。
Hack For Japanの軌跡 – Japan Innovation Leaders Summit 2011 8.6 satから
Hack For Japanの軌跡 – Japan Innovation Leaders Summit 2011

続いて『風@福島原発』の石野さん、笹島さんが登壇。
風の流れと福島原発から放出される放射能をグラフフィックでマッピングするアプリ。
子供を外で遊ばせたいと思う親御さんを思って開発され、「1日でも早くUninstallされる日がくるのを目指しています」と語られた姿はエンジニアとしてだけでなく人として尊敬。

そして、gclueの佐々木さんの『ガイガーカウンター』
実は以前に直接ガイガーカウンターを見せて頂いた事があったのだが、すごい進化してました。驚き。

放射能の目視化をスマートフォン上で実現するためのアプローチで、
ZIGBEEで転送してWebSocketでウェブブラウザで閲覧できるものや、赤ベコにはいったもの(笑)まで紹介されました。
情報をオープンにし、地域を越えて開発者が集まり開催したハッカソンの中で徐々に形になって言ったという・・ソーシャルにより繋がり遠く離れた個人の開発者と連携してモノを作り上げていくなんて10年前ではなかった。
製品化され本当に必要としている人たちが使える日がくることを願ってます。

最後に『フォトサルベージの輪』
シンボリック・コントロール株式会社の伊藤さんが発案し、白石さんが実現したという、
「被災地で失われた写真を修復する」活動の一環として作成されたアプリケーション。

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03まとめ

イベントに参加して

総括として技術的な内容が多かった本イベントでしたが、
改めて考えらせられる機会を与えられました。

開発やモノづくりをしていく上で大切なものを見つけ、より良い世界へ。
そして未来へ続く可能性を模索していきたいです。

交流会

各企業のエンジニアの方をはじめ、登壇者の方々から直接貴重なお話を伺う機会を持て有意義な時間を過ごし、各社テーブルを挨拶でまわると、色々お土産を頂きました。ありがとうございます。

あと、石井教授がErmineWebの名刺を褒めてくれまして・・2200年がどのような世界になっているかの話しもさせて頂きました。

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  *講演者資料と関連リンク

Hack For Japanの軌跡 – Japan Innovation Leaders Summit 2011 8.6 satから
クラウド時代のアーキテクチャ設計
Sinsai.info と Crisis Mapping
WEB+DB PRESS Vol.59
MIT石井教授ツイッターアカウント@ishii_mit

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